シリコンバレー起業日記

シリコンバレーでSearchManというアプリ開発社向けのマーケティングツールを作っています。

シリコンバレーで起業したいならE2ビザ(投資家)ビザは出来るだけ避けるべし

ちょっとマニアックな話になりますが、誰もこういうことを書かないので、敢えて書いておきます。

(尚、私は移民弁護士ではないので、実際にビザ取得等をする際は、自己責任で移民弁護士にちゃんと相談してから実行してください。私に相談や文句を言われても責任取れません。)

 

アメリカで起業する場合、いろいろなビザのオプションがあるが、比較的日本人に人気なのが、E2ビザ(投資家ビザ)。詳しくはこちら

このビザは、特定の国(例えば日本)の国籍を有する人が、議決権の50%以上を持っている場合、特定の国出身の人(例えば日本人)が投資家、あるいはマネージャーとして、アメリカで働くことができる、というビザです。

一般的には、ビザを取りたい人数 x $100-200K(1000-2000万円)程度、アメリカの会社の銀行口座にお金がある必要があって、その上で、それなりに(有形)資産を持っていなければならない(つまり、お金と事業に対して明示的にコミットしている)ということが必要です。

 

このビザは、日本からお金を「持ってくればいい」ので、他のビザに比べると、比較的良く使われます。特に、日本の円という通貨は他の国の通貨に比べてずっと強いので、日本人にとってはこのビザの障壁が比較的低いのです。他のビザはここで書いたように、基本的には「アメリカ人には出来ない仕事ができる助っ人」にしか出ないので、高度な専門性が要求されます。

 

例えば「アメリカで寿司屋を開業する」みたいな、未来永劫、自己資本をキープできる場合にはとても良いビザなのですが、スタートアップには向きません。なぜなら、シリコンバレーでスタートアップをやる場合、ほぼ確実に創業者の持分が50%を割るからです。日本人の持分が50%を割った瞬間に、(理屈上)このビザは無効になります。もちろん、アメリカの移民局は全会社の株主構成を毎日調べるわけではありませんので、バレるまでアメリカにいても大丈夫、と考える人もいるでしょうが、万が一バレたら、即刻国外通報です。(そして、これは「不法移民」ということになるので、恐らくそれ以降、アメリカに入国出来なくなるなどのペナルティが課されるでしょう。)

 

シリコンバレーのスタートアップは、平均的に、

  • シードラウンドで約20%程度
  • シリーズAで約33%程度

の株が希薄化します。従って、E2ビザでいると、シリーズAが出来ないのです。(シリーズAをやると、自分自身がアメリカに居られなくなる。)

 

そして、僕が最近、某・移民弁護士から聞いた話だと、シリーズAに行く前でも場合によっては大変なことになる、という話です。それは、

  1. E2(投資家)ビザでアメリカで働いていて、
  2. Convertible Notesで資金調達していて、
  3. まだConvertはしてないが、Convertすると日本人の持分が50%が割ることが分かっている

というケースです。この場合、移民局の監査で一発でアメリカ退場になるケースが発生した、とのことです。

 

例えば、凄く単純化すると、創業者が日本人で最初100%株を持っていて、(日本人以外から)$5Mのcapで$3M調達していると、このConvertible NotesがConvertすると、創業者の株は自動的に50%以下になるわけです。(Aラウンドがあろうがなかろうが、どうやってConvertしても、50%以上になります。)

 

この場合、実際にConvertしたかどうか(株が顕在化しているかどうか)に関わらず、移民局はアウト(E2の資格が無い)という判定をするようです。つまり、即刻国外追放です。

 

なので、コンサバで賢明な弁護士は、E2の場合は、Convertible Notesを勧めません。というか、ビザ申請前にConvertすることを勧めます。「Convertした後でも、日本人が50%以上です」と言えるようにするためです。

 

というか、僕、これに引っかかる会社を少なくても3社は知っていて、皆、移民局に見つからないようにと祈るしかありません。違法状態だけど、監査かビザ更新までは分からない、という奴です。

 

少なくても次回のビザ更新時にアウトになりますが、それまでに永住権取るというのも時間的には現実的でないので、悩ましいですね。

 

更に問題なのは、アメリカの弁護士というのは、結構いい加減です。弁護士によっては、convertすると創業者が50%割ると分かっていても、1) convertしなければ大丈夫(従って、notesをずっと延長しまくればいい)、2) E2は5年なので、5年以内に永住権申請するとか、他のビザにするとか考えればいいw(そして、実際には5年フルでもらえずに2年しか貰えないとか)とか、後先考えずにいろいろ言う人がいます。弁護士も商売なので、目の前の案件が欲しいのです。そして、E2ビザというのは、弁護士のフィーが高く取れるビザなので、弁護士はE2をものすごいオススメしてきます

皆さん、移民弁護士選びには十分注意してください。

 

 

簡単にフローチャートにまとめると、理系、あるいはMBA等の(初期のスタートアップに必要な分かりやすいスキルがある)人なら

  1. H1Bがタイミング的にあうなら、間違いなくH1B
  2. O1が可能ならO1
  3. L1が可能ならL1

というのがいいかと思います。この3つのビザは、グリーンカード申請もしやすいです。会社が起動に乗った時点で、すぐグリーンカードを申請しましょう。

 

文系の人(除くMBA)は大変です。H1BやO1はちょっと難しい場合が多いです。

  1. L1が可能ならL1
  2. それでダメなら仕方なくE2

ということになってしまうのですが、上述のように、創業者がE2でいるというのは、会社としてものすごいリスクです。投資家側から見ると、「自分が1/3のシェアを取ると、この創業者は母国に帰らねばならない」という状態になるので、普通、投資出来ません。

 

シリーズAも日本の投資家からやればいい、と言う人も居ますが、そんなんじゃ勝てませんね、グローバルな競争に。それなら最初から日本でやった方が良いかと思います。